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熊本地方裁判所 昭和36年(わ)124号 判決 1961年8月08日

被告人 本庄繁

昭一二・五・五生 無職

古閑孝義

昭一六・七・六生 無職

主文

被告人本荘繁を死刑に、

被告人古閑孝義を無期懲役に

処する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人本荘は孤児として熊本市内の養護施設大江学園において成長し、同市大江小学校三年在学中右学園を無断で飛び出した後、爾来、生来の怠惰癖から定職に馴染めず、靴磨き、石炭拾い等いわゆる浮浪者の生活を続けたり、転々と住込み先を変え乍ら各種商店の店員をしたり等していたが、当時は勤め先の集金を持ち逃げしてパチンコ等に所持金をつかい果し、帰住先なく同市内を徘徊していたもの、被告人古閑は飽託郡託麻村東部中学校一年修了後、暫く農業、住込み店員等したり、出稼ぎ土工として各地を転々したりした後、いわゆるやくざの世界に憧れて熊本市内の遊び人の世話になり、自宅には殆ど寄りつかない生活を送つていたが、当時はやくざの兄貴分から纒つた金をつくるよう命ぜられ、その当てもなく独り同市内を徘徊していたものであるが、昭和三十六年三月二日午前四時頃、同市辛島町の映画劇場富士館前附近路上において偶々知り合い、その後の行動を共にするに至つたが、被告人古閑の所持金も食費や遊興費に忽ちつかい果したため、その後は被告人本荘の着衣等を入質したり或は被告人古閑の実家や知人の世話になつて僅かに糊口を凌いだけれども永続きせず、遂に金銭に窮する余り、同月五日午后五時頃、いわゆる白タクの運転手を殺害して自動車を強取し、その自動車を小倉方面に売り飛ばすことを企て、犯行の方法として、被告人古閑において運転手に対し便意を訴えて停車を命ずることを合図に被告人本荘において運転手を殺害すべきことを申し合わせて共謀の上、

第一、同日午后六時頃、同市々電終点子飼橋停留所附近路上において、予て同月二日被告人古閑において買い求めていた刃渡約九センチの登山用ナイフ一本を所持した上、客を装つて柏尾信二の運転する熊五す三七一七号ダツトサン小型四輪乗用車を停車させて乗車し、もつて強盗の予備をなし、

第二、同日午后八時頃、同市辛島町中央映画劇場前附近路上において、折柄同所で客持ち停車中の白タク運転手阿美古真次(当三十八年)の運転する熊五す一三二三号ダツトサン小型四輪乗用車に客を装い乗車した上、被告人古閑が熊本の地理に詳しいところから同運転手に対し同市健軍方面へ向けて運転すべく命じた後、順次進行方向を指示して熊本県飽託郡託麻村戸島方面に赴かせ、同日午后九時頃、同村字戸島九百八十二番地小平政敏方前附近に差し懸つた際、被告人古閑が便意を訴えて自動車を停車させて降車するや、被告人本荘において突如同運転手の背後から前示登山用ナイフを揮つて同人の後頭部左側下部、前頸部、前胸部、右肩胛間部等を滅多突きにし、同人が逃げ出すや、両被告人協力して右自動車を運転逃走して奪取しようと努めたけれども、エンジンがかからなかつため遂に強取の目的は遂げなかつたが、心臓に達する前示前胸部刺創及び前頸部刺創等に基く失血のため阿美古真次をして間もなく同所附近側溝において死亡させて殺害し

たものである。

(証拠の標目)(略)

(法令の適用)

被告人両名の判示各所為中第一の点は刑法第二百三十七条、第六十条に、第二の点は同法第二百四十条後段、第六十条に各該当するが、各被告人共以上は同法第四十五条前段の併合罪であるから、被告人本荘につき、強盗殺人罪の所定刑中死刑を選択し同法第四十六条第一項本文に則り他の刑を科せず、被告人古閑につき、強盗殺人罪の所定刑中無期懲役を選択し、同法第四十六条第二項本文にり則り他の刑を科せず、よつて被告人本荘を死刑に、被告人古閑を無期懲役に処し、各被告人につき訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項但書を適用して全部被告人等に負担させない。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 安東勝 松本敏男 鍋山健)

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